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岐阜発!温泉博物館第11話 療養泉の泉質分類

 療養泉(治療効果が期待できる温泉)は、温泉の中に含まれる化学成分に基づいて、単純温泉、塩類泉、特殊成分を含む療養泉に分類され、さらにそれぞれが細分されています。

(1) 単純温泉

ガス性のものを除く溶存物質量が、温泉1㎏中に1000㎎(1g)に満たないもので、泉温が25℃以上の温泉を単純温泉と言います。
単純温泉のうち、pH8.5以上の温泉をアルカリ性単純温泉と言います。アルカリ性単純温泉の多くは入浴すると肌がツルツルの感触を得るため、「美人の湯」と呼ばれることがあります。
よく泉質名に「単純泉」、「弱アルカリ性単純温泉」、「アルカリ性泉」といった表記を見かけますが、そのような泉質名表記は誤りです。

(2) 塩類泉

ガス性のものを除く溶存物質量が、温泉1㎏中に1000㎎(1g)以上含まれるものを塩類泉と言います。ここで言う「塩類」とはいわゆる食塩(塩化ナトリウム)のみを指すものではなく、陰イオンと陽イオンが結合してできる物質(塩【えん】)のことです。
塩類泉は、主成分(mvalの値が最も高い成分)としてどのような陰イオンが含まれるかによって、塩化物泉、炭酸水素塩泉、硫酸塩泉に細分されます。
1978年の「鉱泉分析法指針」の改訂により、泉質名の表記の仕方(呼び方)が変わり、塩類泉の場合は、それまで「食塩泉」と呼ばれていたものは、「ナトリウム-塩化物泉」というように、陽イオン名と陰イオン名をハイフン(-)で結んで記すことになりました。現在では両方の泉質名表記が混在して使用されているため、食塩泉のような改訂以前の泉質名表記を旧泉質名、改訂以降のイオン名をハイフンで結んで記す泉質名表記を新泉質名と呼んで区別しています。
塩類泉は次のように細分されます。

1.塩化物泉

塩類泉のうち、塩化物イオンを陰イオンの主成分とする温泉を塩化物泉と呼びます。ナトリウム-塩化物泉(旧泉質名:食塩泉)、カルシウム-塩化物泉、マグネシウム-塩化物泉などがありますが、後2つの泉質はあまり知られていません。
ナトリウム-塩化物泉のうち、ナトリウムイオンを5.5g/kg以上、塩化物イオンを8.5g/kg以上含むものを特にナトリウム-塩化物強塩泉(旧泉質名:強食塩泉)と言います。

2.炭酸水素塩泉

炭酸水素イオンを陰イオンの主成分とする塩類泉を炭酸水素塩泉と呼びます。
ナトリウム-炭酸水素塩泉(旧泉質名:重曹泉)、カルシウム-炭酸水素塩泉、マグネシウム-炭酸水素塩泉などがあります。
このうち、ナトリウム-炭酸水素塩泉(重曹泉)は弱アルカリ性からアルカリ性で、皮膚の角質層を軟化させてツルツル感が生ずるため、「美人の湯」と呼ばれることがあります。

3.硫酸塩泉

硫酸イオンを陰イオンの主成分とする塩類泉を硫酸塩泉と呼びます。

ナトリウム-硫酸塩泉(旧泉質名:芒硝【ぼうしょう】泉)
カルシウム-硫酸塩泉(旧泉質名:石膏【せっこう】泉)
マグネシウム-硫酸塩泉(旧泉質名:正苦味【しょうくみ】泉)
鉄(Ⅱ)-硫酸塩泉(旧泉質名:緑礬【りょくばん】泉)
アルミニウム-硫酸塩泉(旧泉質名:明礬【みょうばん】泉)、などがあります。

硫酸塩泉には「硫酸」とか硫黄を意味する「硫」という字が使われているため、「ひりひりするお湯」であるとか、「硫黄が含まれているお湯」などのように誤解されていることが多いのですが、決してそのような特徴の温泉というわけではありません。

(3) 特殊成分を含む療養泉

療養泉のうち、ガス性のものを除く溶存物質量が、温泉1㎏中に1000㎎(1g)に満たないが、表12の療養泉の定義に示される二酸化炭素などの5種類の物質(特殊成分)を基準値以上含む温泉、又は、前述した塩類泉で特殊成分を基準値以上含む温泉は「特殊成分を含む療養泉」として分類されています。これはさらに以下のように細分されます。

1.特殊成分を含む単純冷鉱泉

特殊成分を基準値以上含む温泉で、泉温が25℃未満のものです。

  • 単純二酸化炭素冷鉱泉
  • 単純鉄冷鉱泉
  • 単純酸性冷鉱泉
  • 単純硫黄冷鉱泉
  • 単純放射能冷鉱泉 など
2.特殊成分を含む単純温泉

特殊成分を含む基準値以上含む温泉で、泉温が25℃以上のものです。

  • 単純二酸化炭素温泉
  • 単純鉄温泉
  • 単純酸性温泉
  • 単純硫黄温泉
  • 単純放射能温泉  など
3.特殊成分を含む塩類泉

塩類泉の中で、水素イオンを1mg/㎏以上含む温泉は、塩類泉の泉質名の最初に「酸性-」と付けます。ハイフン(-)を必ず付けます。

例) 酸性-アルミニウム-硫酸塩泉

また、水素イオン以外の特殊成分を基準値以上含む塩類泉の場合、塩類泉の泉質名の最初に「含二酸化炭素-」、「含硫黄-」などのように付けます。

例) 含硫黄-ナトリウム-炭酸水素塩泉
含二酸化炭素-ナトリウム-塩化物泉
含鉄-カルシウム-硫酸塩泉

 湧き出したばかりの単純鉄泉や含鉄泉の源泉に、お茶の葉やお茶を入れると、温泉の色が真っ黒に変化することがあります。これはお茶の中のカテキンに含まれているタンニンという物質が鉄イオンと反応して黒いタンニン鉄の沈殿ができるためです。
鉄分の補給のために鉄分を多く含んだ温泉水を飲んだとき、すぐにお茶を飲むと、体内に吸収されにくいタンニン鉄ができて、鉄分の補給ができにくくなるので注意する必要があります。
単純硫黄泉や含硫黄泉の硫化水素型の温泉に入浴する際、銀製の指輪やネックレスなどを付けたまま入浴すると、銀と硫化水素が反応して黒い硫化銀になり、銀製品が黒く変色してしまうので注意する必要があります。

(4)  泉質名の決定

温泉の泉質分析をもとに温泉分析書が作成されます。その中には、試料(温泉水)1㎏中の成分、分量及び組成が陰イオン、陽イオン、遊離成分、微量成分が表などで示されます。
温泉の泉質名は、分析書に示される泉温や成分の種類、分量、組成などによって決定されます。

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