岐阜発!温泉博物館第17話 緑色の温泉のメカニズム
鮮やかな緑色の岩手県国見温泉
久々に「岐阜発温泉博物館」を再開します。長い間ご迷惑をおかけしました。
さて、前回の16話から数年の月日が過ぎてしまいました。当然、この間も温泉の研究が日本中で行われている訳で、温泉に関する知見もますます深まってきました。
以前「13話 様々な温泉の色」の中で、「このような温泉が緑色を呈するメカニズムは明らかになっていません」と述べましたが、近年、バスクリーンのような鮮やかな緑色を呈する温泉の色のメカニズムが研究され、明らかになってきました。今回は、その話題についてお話しします。
一口に緑色の温泉と言ってもいろいろなタイプがあります。無色透明のお湯でも、浴槽が深ければ緑色っぽく見えます。ご存知の通り、遠くから川を眺めると、特に深い淵の部分が緑色に見えますが、これと同じメカニズムです。これは、太陽光のうち、赤色系の波長の光が水に吸収されるために起こる現象です。もともと水に色がついている訳ではありません。また、井戸水や川の水などが混じったりそれを加水したりしているような温泉では、露天風呂などが緑色を呈することがあります。これは、もともと水の中に生息していた藻類などの植物プラントンが、露天風呂などで日光を浴びて爆発的に増殖するために起こるものです。水を入れ替えないプールがすぐに緑色に変色してしまうのと同じです。藻類は太陽の光によって爆発的に増殖するものが少なくありません。地下深くに存在している温泉水に成分として光合成をする藻類が含まれていることはありませんので、温泉成分とは関係なく、湧出後に増殖したものだということがわかります。
これとはちがって、緑色温泉の代表格ともいえる岩手県の国見温泉や長野県熊の湯温泉などのような硫化水素を含むタイプの温泉が緑色に呈色するメカニズムが研究されてきました。どちらかというと黄緑色に近いこれらの温泉は、「成分として含まれる多硫化イオンの黄色」と、「太陽光が温泉中に含まれる炭酸カルシウムまたは硫黄粒子によってレイリー散乱を引き起こして呈する青色」との混色によるものであることが明らかになりました。多硫化イオンの黄色というのは、かつて販売されていた「六一0ハップ」や「草津温泉ハップ」などの液体入浴剤の原液の色です。
話は変わりますが、「六一0ハップ」や「草津温泉ハップ」のような優れた入浴剤が姿を消す羽目になってしまったことは本当に残念なことです。再び市場に復活することを願ってやみません。